2015年8月16日日曜日

萩LOVEハイスクール0期(2010年度)

2010年5月、プロジェクト型授業の相談をするために萩市国体推進室を訪ねた。私が担任をしていた情報デザイン科三年生の「総合実践」という授業では、社会と繋がったサイト制作を目標にしていた。1・2年次での基本的な技術を身につけていたため3年次には5人を1グループにして模擬ホームページ作成会社を作り、実際に公開されているページをグループで競い合って作るということにしていた。実際に公開されているページを作ることで多くの社会人との関わり、実践力が高まり、グループ(チーム)での制作を通して授業内でチームワークを身につけられると考えたからだ。しかし何を作るかというとその選定が難しかった。まず高校生が授業内で作るものなので、時間がかかる。また公開した後のドメインの管理や更新について考えておかなくてはならない。そのような条件を満たしたサイトはないかと考え探していたところ思いついたのが、萩市国体推進室のホームページ作成だった。

2011年は山口県で国体が開催される年で、各市毎に国体のサイトを作っていたのだが、萩市には独自のサイトを作っていなかった。他の市の多くは業者に発注していたが萩市にはその予算がなく萩市市役所のホームページのコンテンツの一部として情報発信していた状態だったので、これを高校生が改善していくという方法が取れないか?と国体推進室に持ちかけたのである。
担当の方はどんなものが作れるか見せて欲しいということで、早速ホームページ作成に取り掛かった。

この取り組みをよりパワフルなものにするために山口県内のネットワークを活かした。ちょうど4月に「第1回山口県WEB勉強会」が開催され県内外の面白い人たち(福岡のプログラマーや広島のSE、山口県内のデザイナーなど)が何か新しいことを始めようとしていた。そして県外の仕事をメインにしているレベルの高いWEBデザイナーやSEを4名招聘しアドバイザー兼審査員として関わってもらうこととなった。そのうちの1名は当時国内でも有数のユーストリーマー(Ustreamで動画配信をする人たち)だったので中間プレゼンや最終プレゼンは授業をユーストで配信した。

2011年2月に選考で選ばれたサイトが公開され、2011年12月まで更新された。(更新は情報処理部の生徒が行った)2010年12月に、このユーストの配信を知った地域活性化団体「萩LOVE」(任意のボランティア団体)のメンバーが訪ねてきて、一緒に萩LOVEのページを高校生に作ってもらえないか?と聞いて来た。詳細はまた年が明けてから、と言われ少し忘れかけていた3月中旬に萩LOVE代表の大平さんや萩LOVEホームページ作成者の吉賀さんたち数名で話に来られた。私ともう1名の教員2名で対応した。萩LOVEからはメリットとして、ホームページ作成の指導をプロから受けられる、自分たちの作ったものがWebに残っていき、いつでも萩を思い出せるなどがありますとの説明があり、私たちも萩LOVEについてやホームページの更新についていくつかの質問をした。
(参考:萩LOVEのサイトより)
http://www.hagi-love.com/hlh/1306394024331.html

話し合った後、2011年度から萩LOVEと一緒に授業を行っていくかどうかについて教員4・5名で検討会が持たれた。外部の人たちを授業内に日常的に入れていくということは今までなかったので、多くの教員は不安があり反対する意見も多く出た。私はその中で、2つの肯定的な意見を言った。
1つは、自分たちの地域を良くしようとボランティアで活動している人たちの姿を高校生に見せることで、その情熱や心意気を感じてもらえるのではないか?もう1つは地域情報を得るためにフィールドワーク(地域に出て話を聞くこと)が増え、自分たちの地域について知ることができるのではないか?

そして最後に「萩LOVEと一緒にやりたくないならやらなくても良いが、もしやらないのであれば別の授業コンテンツを用意する必要がある。それを探すのは大変で今年度のように上手くいくとは限らない。以前のように学校内だけで完結するクローズドな会社ごっこにしても良いが、それは後戻りで生徒のためにならず、情報デザイン科の未来がないと思う。良い代替案を探すか萩LOVEと一緒にやっていくか、生徒にとって何が良い学習環境かを考えて決めていきましょう」と言った。


そして新たな代替案は出ずに、2011年度から萩LOVEと協力した授業が始まることとなった。始まりはみんな不安だったのだ。